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【175】ホトトギスが鳴いた [保育園送迎記]

 この年になって正岡子規『墨汁一滴』『病床六尺』『仰臥漫録』の三部作を読んだ。教科書などで部分的に鑑賞することはあっても全部を読み通すことはなかったが、自分の罹っている病気にも共通するものがあるのではないかとそういう気になったのである。むろん、病気の深刻度も治療の技術も全然違うが、読んでみるとわかることが多かった。

 NHKTVの「坂の上の雲」でも子規の闘病生活が描かれていた。子規(香川照之)が亡くなり、妹律(菅野美穂)が号泣する場面はとても感動的だった。でも実際は子規は律の気の利かなさを怒り、殺したくなるほどだとさえ書いている。また、病状の凄まじいまでの苦しさに死にたいと何度も書き、枕辺にある千枚通しや小刀のスケッチもしている。

 日経新聞でいま伊集院静が「ミチクサ先生」という夏目漱石を主人公にした小説を連載している。子規はじめ高浜虚子、寺田寅彦といったおなじみの人物が出てくる。何度これまで書かれてきたかわからないほど、この設定はおなじみだが、この小説は夏目漱石という国民的とまで言われる大作家がどうやって生まれたかを題材にしている。家族や友人、門弟たちをからませながら、著者の想像力よろしく書かれてあるので実際がどうであったかは別にして面白く読める。帝大を辞めて朝日新聞に入社したいきさつなども当時の新聞社間の競争などを交えておもしろく書いてある。

 しかし、今さらながら驚くのは漱石が作家として活躍したのは十数年に過ぎないということである。『我が輩は猫である』から晩年の『明暗』が書かれるまではたったの11年、38歳から49歳である。その間に日本の近代文学の基礎を築いた諸著作を書いたのである。しかも胃潰瘍から糖尿病、神経衰弱、痔疾と度重なる病気に苦しみながら。漱石と子規は同じ年である。お互いを尊敬し、刺激し合いながらあれだけの仕事をした。

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 先日早朝、ラジオ体操に通っている公園の木立からホトトギスの鳴き声が聞こえてきた。山の中で聞くことはあってもこんな里で聞くのははじめてである。よく響く。あたりを圧するような鳴き声である。ホトトギスは托卵をする他の鳥の繁殖時期を見計らって遅めに渡ってくるらしい。ほんとかね。そんなことがあったので子規の話につながるのである。

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