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〔6〕やはりモーツアルトから [みたび寄り道]

 ウオークマンといえばソニーの代表的なヒット商品として世界中に広まったのは周知の通りである。ただ、あれはそれほどのヒットを狙って作った商品ではなかったような気がする。「こういうのがあったらいいな」くらいの遊び心的な動機で開発されたのではないか。だいたいヘッドフォンで音楽を聴きながら街中を歩くなどはほめられた行動ではない。危険でもある。電車内などでは非常に迷惑がられる。

 かくいう私もウオークマン、CDウオークマン、iPodと合わせれば10台は買っている。買っているが、これは音楽鑑賞のツールとしては外道邪道だといつも思っている。外界の音を遮断して自分の世界にこもるのは精神衛生上も安全面からも決してよくない。回りから話しかけられても受け答えができないし、歩行中でも自転車でも危険である。さらにiPhoneとなると、耳も目も意識も外界から遮断される。私はいつもいうのだが、電車の中や公道を歩行しながらのスマホは実に見苦しい。

 話が飛んでしまった。マーラーとウオークマンの話だった。クラシックに限らず音楽鑑賞で一番いいのは生の演奏を体験することだが、経済的理由その他でそう簡単にはかなわない。だからレコード、のちにはCDやDVDで日常は聴くのであるが、ステレオの前で何も他のことをせずに一心に聴くということはできるものではない。本や新聞を読みながら、デスクワークをしながら、といった聴き方になる。その点、山歩きをしながらウオークマンというのはいい鑑賞法になるのである。もちろん、連れのいない、危険のない低山に限るのであるが。外道邪道といいながら、こういう聴き方をしていたのである。

 マーラーについては、ジュゼッペ・シノーポリ指揮のフィルハーモニア管弦楽団で2番、ワレリー・ゲルギエフ指揮のマリンスキー管弦楽団で3番を聴きに行った。一流どころを一流ホールで聴いたのはこれくらい。もう何年前になるか。シノーポリはお医者さん(脳外科・心理学)でもあったが、その数年後に亡くなってしまった。私が聴いたときは、最前列で見ていたが、相当の肥満体であった。指揮本番中に心筋梗塞で急逝したそうだから、そういうことも関係したのかもしれない。たまには本物を聴くのもいい経験だな。

 さて、クラシックでまず聴いてみたいのはやはりモーツアルトである。交響曲、ピアノ協奏曲、弦楽四重奏曲、五重奏曲、そしてなんといってもオペラ。これらを聴きました。カール・ベーム、カラヤン、グルダ、ブレンデル、内田光子、その他その他。最初の頃に聴いて一番気に入ったのが「フルートとハープのための協奏曲」と「ピアノ協奏曲26番戴冠式」。これ誰が聴いてもすぐわかる、とても気持ちよくなる曲である。

 モーツアルトの次はベートーベン。交響曲、ピアノ協奏曲、ピアノソナタ、弦楽四重奏曲、これらはいまでも繰り返し聴いている。私の場合、指揮者や演奏者によってどこがどうちがうかなどはよくわからないのだが、聴いただけで違うと思ったのはフルトベングラー。黒澤明みたいにすごさが伝わってくる。フルトベングラー指揮、メニューイン/ヴァイオリン、フィルハーモニー管弦楽団のヴァイオリン協奏曲は大昔(1953年)の録音だが、まことにすばらしい。「演奏者と聴衆との間に感動は生まれる」とフルトベングラーは言ったそうであるが、なるほどと思う。


 

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