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〔7〕マーラー、ブルックナー、ショスタコーヴィチ [みたび寄り道]

 モーツアルト、ベートーベンの次はマーラーである。この頃はマーラーが盛んに演奏され出したころで、CDという長時間録音のノイズなしという便利なものが世の中に出てきたおかげもあって、クレンペラー、ワルター、バーンスタイン、ショルティといったマーラー直系のユダヤ人指揮者をはじめ、先にも述べたズービン・メータ、小澤征爾、テンシュテットといった指揮者たちが世界一流どころのオーケストラを指揮したCDが次々に発売されてきた。それまでのLPより小さくて長時間録音が可能なCDの出現はマーラーやブルックナーの交響曲のような長大な作品を聴くのに便利になったのである。

 佐々木昭一郎という元NHK(当時。今はテレビマンユニオン)の演出家が、1980年につくった「四季・ユートピアノ」というドラマがあった。音楽と映像とドラマが渾然一体となった作品だが、そのなかでマーラーの交響曲4番がずっと流れていた。これを私はたまたま見たが、その音楽に取り憑かれてしまったのだ。それ以来、バーンスタイン=ニューヨークフィルの4番と小澤征爾=ボストン交響楽団の1番を毎日毎日飽きもせず聴き続けることになった。1番と4番は比較的短くメロディもわかりやすいので入門にはよかったのである。毎朝、マーラー4番をかけるものだから、妻は「もういいでしょう。この曲きらい」と言い出した。わからぬでもない。甘美なメロディは聴きようによってはねっとりとしてしつこい。だからしばらく聴くと、しばらく間を空ける。そのあとは、ズービン・メータ=ウイーンフィルの2番も繰り返し繰り返し聴いた。

 モーツアルトといいマーラーといい、天才は狂気をだいぶ含んでいる。それは音楽に限らないが、そういう人間たちの創造物に容易に触れることができるのは幸せなことと言えるだろう。さて、マーラーに飽きたら次はブルックナーだ。ブルックナーと言えば当時は朝比奈隆巨匠だった。これを上野に聴きに行った。9番シンフォニーであったが、ぐっすり眠ってしまった。熟睡である。もったいないことをしたものである。

 ブルックナーの次はショスタコーヴィチ! 4、5、7、8番交響曲あたりが素人にはわかりやすい。CDでボリュームを上げて繰り返し聴いている。「ショスタコーヴィチの証言」という有名な自伝があるが、これがおもしろい。当時にスターリン独裁下のシビアな現実が描かれていて、今もそうだが、いやはや大変な国である。ショスタコーヴィッチとハチャトリアンに新しい国歌を作れとスターリンから命令されて、2人で苦心するところなどおもしろいような悲しいような。それにしてもあの国はおそろしい。でも音楽・文学など世界的な遺産が多いけどね。

 同じスターリン体制下に若い日を送った有名なプリマドンナ、ガリーナ・ヴィシネフスカヤの『ガリーナ自伝』という本も実に興味深い。彼女はこれも世界的なチェロ奏者・指揮者として有名なロストロポーヴィチ夫人でもあり、ショスタコーヴィチ、ソルジェニーツイン、ブリテン、サハロフなど芸術家や科学者たちとの交流が描かれている。当時のソ連指導者たちの姿も詳しく描かれている。 ドイツ軍に包囲されたレニングラードの様子が生々しく描かれている。ショスタコーヴィチは路上で少年が軍人に射殺されるのを目撃している。レニングラード包囲戦は900日に及び、砲撃や飢餓で67万の市民が犠牲になったという。

 先頃、ノーベル文学賞を受賞したアレクシエーヴィチという女流作家の作品を最近読み出した。この国の歴史は革命や戦争を経て、今現在に至るまでずーっと連続して途切れることなく過酷なままということがわかる。

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