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13.奥多摩三山 御前山〜小河内峠、トリカブト、警察無線 [私の山歩き]

 よく難読地名として挙げられるのが人里である。接したことがない人は絶対に読めない。「へんぼり」と読む。近くには笛吹という集落もあって、こちらは「うずしき」という。古代に朝鮮半島から渡ってきた人たちが作った集落ではないかという説がある。埼玉には高麗(こま)というところがあって、高麗神社という立派なお社もある。唐・新羅に滅ぼされた高句麗の人たちが日本に亡命してきたときに、朝廷が住まわせたという。

 人里や笛吹という集落のある谷間の南側が笹尾根で北側が浅間尾根だ。仲ノ平から西原峠とは逆に北側に登って、浅間尾根を秋川方向に歩くのも気持ちがいい。この道も途中、馬頭観音が祀ってあるところがあるので、昔は普通に人や馬が往来していた道であることがわかる。雨で川が氾濫して通れなくなる川筋の道より、尾根筋の道のほうが安全で丈夫なのである。

 一度、春先、花が咲き出す頃に歩いたことがあるが、人里峠の先、浅間嶺(せんげんれい)につくと、レンギョウやヤマブキやツツジが花盛りでまるで桃源郷のようであった。ここからさらに歩くと、払沢(ほっさわ)の滝に出る。

 この浅間尾根の北側の谷間を流れる秋川上流の北秋川のどん詰まりに、藤倉という集落がある。ここから御前山いたる登山道は人があまり通らず、道も荒れているが、晩秋、枯れ葉に埋もれた小河内峠のあたりは、奥多摩湖(小河内ダム)を眼下に望んで、静寂の空間がとても清々しい。ここから御前山手前の惣岳山へ険しい登りが続く。ここまで登れば御前山山頂はすぐだ。いつか秋に登ったときはこの辺り一面にミヤマトリカブトの花が群落で満開だった。実に鮮やかな紫色である。

 御前山は今は奥多摩駅から奥多摩湖までバスで行って、小河内ダムを渡ってすぐに登山道に取り付くコースが一般的になっているが、30年前頃までは奥多摩湖の南側の淵ををずいぶんと歩いて、小河内峠へ登るコースだった。しかしこのコースは今は歩けない。だから小河内峠コースは武蔵五日市からのバスで藤倉まで行くことになる。

 さて、御前山からの下りは、栃寄沢を境橋へと沢筋の道を下りて、奥多摩駅へのバスに乗るのが近いが、この道は沢に道がついているので石だらけでとても歩きにくく、また、途中からは舗装道路を延々と歩くので、一度行っただけでいやになってしまった。だから、以前にも触れた湯久保尾根を下りることにする。ただ、春から初夏にかけては、ヤマブキ、ウツギ、ヤマアジサイなどの花がきれいだ。
 
 ある夏、1人で歩いたとき、ふもとの宮ヶ谷戸という集落に着いたが、武蔵五日市へ向かうバスが出たばかりで2時間近くも待たなければならなくなった。こういうことはままあることなので、待つか、と思ったが、なにせ日差しが強くてたまらん。タクシーを呼ぼうにも当時は携帯電話などない。ちょうど目の前に駐在所があったので、おまわりさんに「そこの電話を貸してもらえませんか」と頼んだら、「これは警察無線です!」とたしなめられてしまった。でも、親切なおまわりさんは、自分の宿舎に戻って、(ふつうの民間用の)電話をかけてタクシーを呼んでくれた。ああいう親切はいつまでも覚えているな。
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