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〔2〕ステレオが欲しかった [みたび寄り道]

 Sのことを続ける。私が地元の普通高校に入学したのは1968年。美術・書道・音楽の選択科目別にクラス分けが行われていた。別にそれが得意なわけではないが、ほかの2つはそれ以上に縁がないので、音楽を選択した。その時のクラスにいた友人たちが今もって付き合いがある。そのうちの1人がSだ。親の仕事関係ですでに通っていた高校から転校してきて、2度目の1年生となって私の前に現われた。この男と私はバスケット部に入ることで友人になった。

 高校で習う音楽は当然、そういう由緒正しい音楽であるから、あんまり興味がわかない。期末の試験には先生のピアノ伴奏で「カロミオベン」などという歌曲を歌わされた。まったく歯が立たない。今でも思い出すと顔から火が出てくる。クラシック音楽をさかんに聴くようになるのは、それから10年ほど後のことである。当時われわれが聴いていたのはやはりなんと言ってもビートルズとローリングストーンズとボブ・ディランであった。私の好きな音楽は音楽でもこういうものだったのである。高校の授業とはまったく(!)関係がないのである。

 Sと気があったのは、この方面の趣味であった。とはいえ、九州の田舎の高校であるから、当時は深夜放送で聴くくらいしか方法がなかった。当時、流行りだした深夜放送は九州からも途切れ途切れではあったが、深夜の電波状況故に聴くことができた。亀渕昭信とか糸井五郎とかオールナイトニッポンが一番おもしろかった。今でもそうだが、深夜にトランジスタラジオを聴くのがとても好きになったのである。

 そのころはビートルズの終盤期である。でも、とにかく出るアルバムすべてが無上の喜びであった。ストーンズも「ホンキートンクウイメン」などというしびれるようなブルースっぽい曲が人気だった。こういう曲がかかると、明くる日はSと「お前聴いたか?」などと話す。

 トランジスタラジオはなんとか持っていたが、ステレオなどはとても手が出ない。このステレオを買うことが当時の私の夢だった。16歳になって、自動二輪の免許を取って90ccのオートバイを父に買ってもらった。これは通学はもちろん、家で作っていたブドウなどの果物を市場に出荷するのに使うので、買ってくれたのである。

 このオートバイで夜中に友人の家(15キロも離れている)まで遊びに行く。ステレオがある友人の家に行って、真夜中にビートルズやストーンズなどのレコードを聴いて、世が明けないうちに帰ってくる。こんなことをやっていたのである。まったく。昼間の授業中は当然居眠りばかりになる。

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(3/6/2015)


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